『ピンクフロイド ザ・ウォール』

1983年 イギリス 監督アラン・パーカー

ザ・ウォール [DVD]

ザ・ウォール [DVD]

公開時に劇場で(どこだったかは忘れました)。
たしか、あまりにも一般受けしそうもない内容なのでなかなか公開されず、YMO高橋幸宏氏が運動(?)して、ようやく単館公開されたみたいな経緯があったような記憶があります。
ピンクフロイドといっても初期のプログレやってた頃のじゃなく、やたらメッッセージ性の強い楽曲がメイン(特に同名のアルバム「The Wall」)。記憶ではメンバーはまるっきり出てこないんで、ボブ・ゲルドフボブ・ゲルドフによるボブ・ゲルドフのためのピンクフロイド映画って感じですわ、コレ。

ストーリーは、学校になじめなかった自意識過剰な青年がロック歌手となり、カリスマ・ミュージシャンとしてブイブイ言わせるものの次第に自らの狂気の「壁」に囚われていき、というような電波系の若者の妄想を映像化したような感じのものです。カリスマになった主人公はヒトラーのように聴衆を煽りまくるのですが、オールバックで制服という出で立ちは、ほとんど鳥肌実ジオン公国総帥のギレン・ザビその人です(眉毛を剃るのは基本ね)。ちなみに脚本はロジャー・ウォーターズ

ストーリーよりもひたすらビジュアルがぶっとんでる映画で、野っ原の真ん中の浴槽でリストカットしてお湯が真っ赤というのは、劇場版エヴァンゲリオンでまんまパクられてませんでしたっけ。もう少し工夫せいよ。「エヴァンゲリオン」では、敵の攻撃を防御するフィールド=「心の壁」という比喩がありましたが、これもこの映画の影響では? その他、変なマスクをかぶせられた子供たちがベルトコンベアに乗せられてミンチになっていくシーンとか、グロテスクで見てるだけで「鬱」になりそうな(ピンクフロイドだけに)気違いじみたがシーンやアニメがいっぱいで、落ち込んでいる時なんかに、うっかり観ちゃうとたぶんかなり辛いことになりそうです。

狂気や妄想を映像化しようとした映画は結構あると思いますが、映画監督や映像作家によるそうした映画は、脚本によって狂ってる度もある程度は抑制されるように思うのですが、ミュージシャンとか作家が脚本書いた作品では、そのあたりが「手加減なし」になっちゃうように思います。邦画では寺山修二映画とかがそんな感じだし。

DVDは未見ですが、特典にブチキレたセンスのアニメ担当「ジェラルド・スカーフ」のコメントが入っているとのことで是非見てみたいもんです。