『カメラマンの復讐』(原題:MEST KINEMATOGRAFICHESKOGO OPERATORA/THE CAMERAMAN'S REVENGE) 

1912年 ソ連ロシア帝国) 監督: ヴワディスワフ・スタレーヴィチ


宮澤やすみさん主催の「小唄カフェ」というイベントで、活動写真弁士の坂本頼光(さかもと らいこう)さんの説明付きで鑑賞。

精巧に作られた昆虫の模型を使ったサイレントのコマ撮り実写アニメーション映画です(しかも制作されたのがロシア革命の2年前の帝政ロシア末期!)。

あらすじ

カブトムシの夫婦が登場。夫はダンサーのトンボと、妻は画家のキリギリスとそれぞれ不倫をしており、夫は仕事の出張と偽り愛人であるトンボのダンサーのいる劇場へ。そこでカブトムシはトンボを狙っているバッタと乱闘になるが、腕力ではカブトムシに敵わない映画カメラマンのバッタはカブトムシとトンボの不倫現場の撮影に成功、復讐の機会を狙う。一方、カブトムシの妻は夫の出張中に愛人で画家のキリギリスを家に引き込んで情事に及ぼうとするが、そこへトンボとの情事を邪魔された夫が戻ってきてしまい修羅場に。
キリギリスは逃げ出し、夫婦の仲が戻ったところでカブトムシ夫妻が映画を見に出かけると、バッタによって夫の不倫現場を収めたフィルムが上映され、激情した妻と夫、バッタの乱闘で劇場は崩壊。カブトムシ夫妻は牢屋へという話。

昆虫の模型はかなり本物そっくりに作られていて、セルアニメと違って表情が分からないので、体全体の動きで感情表現しています。
虫が主人公というと子供向けのようですが、カブトムシの夫とトンボのダンサーがラブホテルに入って、キリギリスが鍵穴からカメラで盗撮するというシーンもあり、とてもお子様には見せられないようなアダルトな内容。大人向けのエロチック・コメディということだったのか。わざわざ昆虫の模型を使ったのは検閲対策だったのか。
素材のフィルムは染色版だったようで画面に色がついておりました。
アメリカでDVD化されたようで英語の字幕が付いていましたが、坂本さんの絶妙な説明でとても楽しく見られました。

帝政ロシア末期〜ソ連建国直後のサイレント映画には、やはりミニチュアワークが素晴らしいと評判の(未見です)『宇宙飛行』や火星まで出かけて社会主義革命をやってしまうというトンデモSF『アエリータ』など映画史的にも重要なSF映画もあったりしますので、これからもいろいろ見てみたいと思います。
(あらすじの一部が間違っていたので訂正しました)