『イザイホウ −神の島・久高島の祭祀−』 

1967年 日本 監督:野村岳也

 沖縄県南城市の久高島で12年に一度午年に全島を上げて「イザイホー」と言う神事が行われていた。1966年に行われた神事と島の暮らしを記録したドキュメンタリー映画

 久高島は昔から神の島として知られ、さまざまな神事が島の暮らしに組み込まれている。 その最大の神事が12年に一回行われるイザイホー。
 ”イザイホーは、30歳から41歳の、島で生まれ、島に生きる女が神になる神事で、四日間の本祭を中心に、一ヵ月余の時をかけて行われるのである。島の女たちは、ノロ(巫女)を中心に神女組織を構成して島の男たちや島の暮らしを守ってきた。”(映画を製作した海燕社のサイトから引用)
 イザイホーは島民のライフスタイルの変化や人口の減少などから1978年を最後に消滅したという。映画の中でも島民がこれ(1966年の祭り)が最後になるかもしれないと語っていたが、1966年当時でも島民の多くが島外に出稼ぎに出ていて祭りの期間だけ島に戻ってくる様子が記録されている。

 祭りそのものもだが、島の生活の様子も今となっては非常に貴重な記録だろう。島にはほとんど電気が通っておらず、水道も無いので子供たちが井戸で水汲みする様子が映される。男たちはサバニという小舟で漁に出て、女たちは畑仕事をする半農半漁の伝統的な生活で、貴重な現金収入となるイラブー(エラブウミヘビ)の加工の様子も出てくる。学校の先生がインタビューで島の子供たちの将来の夢は島の外で生活することだと語っていたが、これは当時の日本中の僻地で共通した感覚だったのだろう。この映画は秘祭を記録したものとして研究者以外には公開されなかったということだが、秘祭の記録という以上に島民にとっては、不便な暮らしを強いられていた当時の映像があまり見たく無いものだったのかもしれない。今年一般公開されたのは島民の世代交代も進み、懐かしい記録として客観的に見られるようになったということもあるのでは無いだろうか。

 以下のリンク先で監督の島での生活が語られているが、監督もスタッフも金もコネもなく飛び込みに近い状態で食料を自前で持ち込んで島を訪問し、しばらく撮影せずに島民と交流を続けていたそうだ。災害などが発生すると被災地の住民の生活に土足で踏み込むような取材をし、現地のコンビニや商店でスタッフの食料を買い漁る現代のマスコミ関係者は是非見習って欲しいものだと思う。

野村岳也監督インタビュー
http://www.webdice.jp/dice/detail/4541/

2015年1月 渋谷アップリンクXで