『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』 

1975年 イギリス 監督:テリー・ギリアムテリー・ジョーンズ

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル [DVD]

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以前にテリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』を紹介しましたが、この人はモンティパイソンの時代にも映画を撮っていました。ジャンル的にはパロディ時代劇かな。元ネタはイギリス人なら誰でも知ってるアーサー王の聖杯伝説、のはずだけど、元のストーリーに関係ない人物がいっぱい出てくるわ、舞台が現代に飛ぶわ、とにかく低予算なんで苦労して撮ってますっていう自主制作映画っぽい雰囲気に満ち溢れてます。モンティパイソンのギャグは好き嫌いが分かれると思いますが、だまされたと思って是非!

あらすじ

で、いつもはあらすじを紹介するんだけど今回はなしです。アーサー王と円卓の騎士に扮したメンバーそれぞれが、聖杯探しの途中で遭遇する冒険談をスケッチ(いわゆるショートコントをモンティパイソンではこう呼ぶ)にしているというだけ。それぞれのスケッチの内容を文章で紹介しても面白さが伝わらないので変な映画やバカ映画が好きな人はとにかく見てみましょうと言うしかないですね(単に文章力がないだけとも)。

モンティパイソンのメンバー全員が出演する映画は3作あって、これはその1作目。2作目はキリストをネタにした『ライフ・オブ・ブライアン』、3作目は人間の一生の意味を探求するという『人生狂騒曲(原題:Meaning of Life=人生の意味)』。2作目と3作目は予算も増えてかなり豪華なセットのシーンが多いです。特に3作目では老若男女の登場人物全員が「全てのスペル○は神聖なり〜」と精子の歌を歌いながら踊り出す(!)というミュージカル「オリバー」風のシーンがあって結構有名(このシーンを見るとなぜか大林宣彦監督の『ねらわれた学園』がフラッシュバックします)。他のサイトでも良く紹介されてますね。というわけで、ヒネクレ者の自分としては、あまりに低予算でセットが組めないためスコットランドに残っていた古城を借りてロケしたり、ロンドン郊外のただの野っ原か公園にしか見えないところで撮影してたり、馬をレンタルする予算がないので、騎士なのに徒歩で移動したり(従者によるカッポカッポいうひずめの効果音入り)という本作に、「仮面ライダー」や「人造人間キカイダー」の頃の東映のショボイ特撮作品に通じるサムシングを感じたのであえて1作目を紹介します。

そういえば、この映画には、なぜか三つ頭の騎士って怪人(?)が出て来るんだけど、これなんて『イナズマン』のイツツバンバラみたいです(三つ頭騎士は実際に3人が1つの着ぐるみに入ってるから一人でやってるイツツバンバラと少し違いますが。あー、イツツバンバラってのは顔が縦に5つ並んで付いてる怪人です。)。この騎士の腕や足がスパスパ切り落とされて血がピューピュー(本当にピューピューという感じで)出るギミックとか、凶暴な殺人ウサギに襲われて血塗れになるシーンなんかも、役者さんがマジで演技してるだけにバカっぽさ倍増で素敵ですね。

最初に書いたようにストーリーはあってないようなモンですが、ある城に聖杯が保管されているという情報が入り、アーサー王一行が聖杯の引き渡しを求めると、城にいるフランス人の城兵から徹底的に馬鹿にされます(城兵がしゃべるのはフランス語なまりの英語)。そこで城に攻め込もうとすると突然邪魔が入って終わり。本当に終わり。たぶん初めてこの映画を見た人は間違いなく「何じゃこりゃあ、ふざけんな!」と突っ込むこと必至のラスト。いや、いっそ潔いですけどね、ここまでやってくれると。逆に言えば、いわゆるエンターテインメントとしての劇映画の約束事に囚われていない希有な作品だと言えるかもしれません。

「シネマギロテスク」さん(?)の映画評もなかなか的確ですね。つーか、やっぱ誰が見ても自主制作映画っぽいんだな、コレ。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/guillo/cnmgltsq/holygrail.htm