『続人間革命』

1976年 日本 監督:舛田利雄

ブログってのは日記のようなもんで定期的に更新されるというのが世間一般の理解なんだろうと思いますが、このブログは自分の個人的な映画に関する感想やら思い出やらの記憶を残しておくためにはじめたので、はっきり言いまして定期更新なんてはじめから考えてませんので、そこんとこヨロシク!

前々回に『砂の小舟』を紹介しましたら、何と大俳優、丹波先生が霊界に旅立たれてしまいました。合掌。
本格時代劇からギャングアクション、スパイもの、戦争超大作まで様々なジャンルの数多くの映画に出演された丹波先生ですが、主演映画というのは意外と本数が少ないのです。例えば、丹波先生の代表作としてよく上げられる『砂の器』や『ノストラダムスの大予言』にしても丹波先生演じる今西刑事や西山環境研究所の所長・西山良玄はたしかに出番は多いのですが、果たして物語の主人公かと言うとちょっと違う感じがしてしまう。それは、後の大霊界映画でもそうなのですが、1970年代後半あたりから、丹波先生はまるで「語り部」のようになっていくからです。物語の主人公を演じるのではなく、物語をただひたすら語ってしまうと言う、日本いや世界でもまれな「語り部俳優」。『砂の器』では、犯人の数奇な人生を語りまくり(ほとんどナレーター)、『ノストラダムス〜』では破滅に向かう人類文明を環境問題から語りまくり、『大霊界 死んだらこうなる』では、死後の霊界について語りまくる、という具合。しかし、ここに主演俳優として堂々の演技を披露しつつ、さらに語って語って語りまくる2つの作品が。それが『人間革命』と、今回紹介する『続人間革命』です。

あらすじ

創価学会の初代会長牧口の死後、理事長となった戸田城聖丹波哲郎)は、戦争中に官憲の弾圧で壊滅状態になった学会の再建を誓い、積極的に布教活動を行うかたわら、学会の活動を財政面から支えるために自らの出版社・日本正学館の経営にも尽力する。そんな頃、戸田は座談会で山本伸一あおい輝彦)という青年と出会う。山本は入信後、戸田に見込まれ正学館に就職し、雑誌「冒険少年」の編集長に抜擢される。事業が多忙な中、創価学会の活動にも打ち込む戸田だが、復興した大手出版社から次々にライバル雑誌が登場し正学館の経営は悪化。さらに不況が追い打ちをかけ、出版業務を停止。さらに起死回生の策として設立した「東光建設信用組合」も貸付金のこげつきから資金繰りが悪化してしまい...。

このあらすじだけ読むと、これが宗教映画なのか何なのか良くわからないと思いますが、実際に見ても丹波先生の説法以外のドラマパートは、戸田城聖さんの経営者としての苦労話という感じで、説法の中で繰り広げられる特撮で再現される天変地異や壮大な大宇宙の真理とかの話と、奥さん(新珠三千代)が自分の着物を質入れしようとしたり、あおい輝彦が「青い山脈」がかかっている映画館で濡れた靴下を絞ったりという侘しい日常生活が交互に繰り返されて、そのギャップが何とも言えません。
とにかくこの映画の見所は一にも二にも丹波先生の渾身の演技とまさに「神懸かり」とも言えるその話術にあり、160分のうち少なく見ても2/3は丹波先生の説法です。丹波先生が自ら「演じるというより戸田城聖が入って来た」というほどの迫真の演技に加え、催眠術もよくし、当時にして既に一種名人芸の域に達していた丹波節で滔々と教義を語りまくるのを聞いていると、何となく宇宙の真理がわかってしまったような気になってくるから不思議なもんです。

さて、今回正編の『人間革命』でなく続編を紹介するのは、出演者がとにかく豪華で、かつ特撮作品の関係者が多いのと、実際に特撮シーンが多用されているためです。
学会の幹部役で黒部進ウルトラマン)、森次晃嗣ウルトラセブン)、会員を脅すヤクザに岸田森怪奇大作戦、帰って来たウルトラマン)、戸田の碁の相手に名古屋章(帰って来たウルトラマンのナレーター)と円谷特撮組。本家東宝特撮では、戸田のパトロン役で志村喬ゴジラゴジラの逆襲)、ちょい役だけど小泉博(モスラマタンゴ)、特撮ものへの出演は少ないが副会長役で稲葉義男(日本海大海戦、ブルークリスマス)となかなかの顔ぶれ。特撮関係以外でも、スケ番映画の常連だった夏純子がなぜか女性幹部だったり、丹波先生とは『ポルノ時代劇 忘八武士道』で共演した久野四郎が信者役でワンシーンだけ出ていたり、警察の受付に無責任シリーズの人見明がいたり、渡哲也がいきなり敵対するヤクザの葬儀に殴り込みかけたり、組員の中に刈谷俊介がいたりと、意外な俳優さんがちょこちょこ出て来るのでディープな邦画マニアさんも楽しめるはず。
特撮パートの監督は『メカゴジラの逆襲』、北朝鮮ゴジラプルガサリ』の中野昭慶監督が担当。特撮シーンは、日蓮大聖人の「立正安国論」の記述がベースになっており、地震(地割れに人が呑み込まれるのは『恐竜100万年』のパクリ?)、洪水、台風といったおなじみの天変地異シーンの他、鎌倉時代の合戦のシーンでは、首が落ちるは腕が斬り飛ばされるは血飛沫が吹き出すはといった相変わらずの東宝スプラッター描写がふんだんに見られます。こういう凄惨なシーンを目当てに鑑賞するのは本当に罰当たりなのでやめましょう。終盤、子役時代の大竹しのぶ(容姿はともかく、この人、声やしゃべり方が全然変わらん)が唐突に宇宙のはじまりについて語り始めるのですが、そこで出てくるアニメが部分的に切り紙アニメで、ショボくてまたいい味出しております。

それからすごく気になるのが、後に戸田の秘書になる(つまり池田大作先生がモデル)山本伸一役のあおい輝彦の演技。戸田の説法を聞いている時とか、戸田と会話している時の目がかなりウルウルしててちょっと引きます。まあ、宗教上の師匠と弟子なので戸田に心酔しいているのはわかるんですが個人的にはちょっと気持ち悪い。ああ、これはあくまで個人的な映画に関する感想ですので。

そんなこんなでラストは丹波先生の大演説で締めなのですが、このパートだけ見ると2年前に制作された『ノストラダムスの大予言』と何だか区別がつかない。というより、制作:田中友幸、監督:舛田利雄、特撮監督:中野昭慶 主演:丹波哲郎 ってこの3作品まったく一緒だしねえ。

※DVDはAmazon等では取り扱いしてません。創価学会系の「シナノ企画」のサイトで通販するか、信濃町駅前の書店で買えます。私は信濃町まで行って買いましたさ。