『穴』

1957年 日本 監督:市川崑

穴 [DVD]

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横浜の中古DVDショップで購入。
この作品のためにミステリーと言うカテゴリを追加することになりましたよ。
しかしなんちゅうタイトルですか。これも脚本が「久里子亭」(市川監督のペンネームで「クリステイ」と読みます←ミステリーファンならわかりますね)なんですが、他の「久里子亭脚本作品」と同様に、早いカット割りや斬新なアングル、洒落てるんだか間が抜けてるんだかわからない会話、クールでジャジー、時にサスペンスフルな劇伴が共通してます。昔、池袋の新文芸坐で見たカツシン主演の『ど根性物語 銭の踊り』に良く似たテイストの映画でした。

女性ジャーナリストの北長子(京マチ子)は、警察の汚職を暴いた記事のせいで出版社を首になり、週刊日本にある企画を持ち込むことにした。その企画とは、彼女自身が30日間失踪し、その間に見つけた人には賞金50万円、見つからなければその賞金は彼女のものになり、彼女は失踪体験を記事にするというもの。彼女は失踪する間の生活費を工面するため、同居人の紹介で第億銀行渋谷支店支店長の白州(山村聡)から5万円融資してもらうが、白州は、支店長代理の千木(船越英二)と横領を計画していた...。

前半、京マチ子さんがやたらに胸の谷間を強調するシーンが続きますが、この人全体的に肉付きが良い体型なのであまりありがた味がありません。やたら化粧が濃くて早口なのは昔からなんですね。船越氏は一見大人しそうで実は冷酷非情という二面性のある役で、後の江戸川乱歩原作、増村保造監督の『盲獣』の主人公みたいな印象でした。山村聡氏はいつもと一緒です。劇中で「来年定年退職だから」とか言ってますが、実年齢はもっと若かったはず。

猿丸警部役の菅原謙二氏は、太い眉毛で鼻の下にヒゲを生やしていて、良く怒鳴ると、金田一シリーズの等々力警部(加藤武)とそっくり。よし、わかった! 等々力警部のキャラはここからだ。
石原慎太郎氏が新人作家役(そのまんまだよ)で出演しているのもおかしいです。ジャズバーで美声を披露しますが、劣化したせいか元からなのか、残念ながら音が割れてしまっています、トホホ。『黒蜥蜴』(京マチ子さんでなく美輪明宏さん主演の深作版の方)には三島由紀夫が人間剥製の役で出ていたし、この頃の作家は結構出たがりですね。