『コンタクト』 

1997年 アメリカ 監督:ロバート・ゼメキス

コンタクト 特別版 [DVD]

コンタクト 特別版 [DVD]

ハリウッドSFの山田洋次ことSF人情喜劇の名手ロバート・ゼメキスNASAの宣伝マン、カール・セーガンのドリームタッグ。未知との遭遇は夢か現実(うつつ)か幻か。SFに興味がない人が見たら自己中で世間知らずの宇宙ヲタの女性研究者と権力欲ギトギトのパワハラおやじとのバトルにしか見えんかも(苦笑。でも、さすがに御大セーガンの小説が原作だけあってSF考証が緻密だし、それを『フォレストガンプ 一期一会』の監督がリアルに映像化した圧倒的なヴィジュアルでオープニングから押しまくられの150分です。是非大画面でご堪能あれ。

あらすじ

電波天文学者(アブナイ脳内電波を発している天文学者ではなく宇宙から飛来する電波を研究する天文学者です。念のため)エリー・アロウェイ博士(ジョディ・フォスター)は南米の電波天文台基地で地球外の知的生命探査を続けていたが、上司のドラムリン博士(トム・スケリット)に邪魔されてばかり。ブーたれていた彼女に謎のイケメン、パーマー・ジョス(マシュー・マコノヒー)が急接近。勢いでベッドインした二人だが、彼は何と神父様で宗教と科学は融合可能だと言う。基地での調査もドラムリンに予算をカットされて頓挫してしまう。
ニューメキシコの電波基地で独自に調査を始めるためスポンサーを捜していた彼女は謎の大富豪ハデン(ジョン・ハート)から研究資金を引き出すことに成功。しかしドラムリンをはじめとした研究者たちからの圧力で電波基地を追い出されることに。立ち退きが3ヶ月後に迫ったある日、突然ヴェガ星の方角から規則的な電波を受信。発見の報告に国家安全顧問官マイケル・キッズ(ジェームス・ウッズ)と科学顧問官になったドラムリンが乗り込んで来て調査の主導権を握ろうと画策する。一方、電波に暗号が含まれていることを発見したエリーのチームだったが暗号の解読が進まない中、エリーは研究施設のネットワークにハッキングしたハデンから呼び出されるのだが...。


監督をはじめとした制作スタッフの多くが1994年の『フォレストガンプ 一期一会』とカブっているので、SF映画なのに作品全体として「ガンプ」に近い印象を受けます。アクションシーンもないし。『スターウォーズ』以降のSF映画は良くも悪くもアクションがメインになっちゃいますが、それ以前には『2001年宇宙の旅』や『惑星ソラリス』といった科学的な考証に比重を置いた哲学的な内容のアクションなしのSF映画も結構あったんです。もっとも、キューブリックタルコフスキーは他のSFでない作品も結構独特ですが。最近のハリウッドのSF映画でアクションシーンが皆無というのはもうないので、その意味ではこの作品が最後の純SF映画なのかもしれません。

ゼメキス監督は1995年の第67回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞(トム・ハンクス)、脚色賞、編集賞、視覚効果賞の主要6部門を総ナメにした「ガンプ」で見せた「架空の出来事を完璧なまでにリアルに作る」という姿勢を『コンタクト』でも踏襲しています。「ガンプ」では主人公ガンプ青年がベトナム戦争当時の大統領(ケネディとかニクソン)と会見するという合成ニュース映像が使われましたが、『コンタクト』では製作当時のクリントン大統領の会見映像を加工して使用しています。また状況を説明するのにCNNのニュース映像も使われていて、登場するキャスターは実際のCNNのニュースキャスターだそうです。ハリウッド映画しか見ていないと、やっぱりハリウッド映画って凄いなと感心してしまうかもしれませんが、実はリアリティを出す演出として映画の中にニュース映像を入れるという手法はかつて日本の特撮映画でよく使われていたものなのです。『ゴジラ』(1954年)の中の「さようなら、みなさん、さようなら」の名台詞で有名なラジオ中継シーンとか。ちなみにこのアナウンサーを演じたのは役者さんではなく現役のTBSアナウンサー池谷三郎氏(惜しくも2002年亡くなられました)で、他にも『空の大怪獣ラドン』『宇宙大戦争』『モスラ』『世界大戦争』『妖星ゴラス』『怪獣大戦争』『怪獣総進撃』など1960年代の東宝の特撮映画でアナウンサー役で出演されているとのこと(出典はこちら 。それから記録映像に登場人物を合成するというのもウディ・アレンが監督、主演した『カメレオンマン』(1984年)がすでにやってます。こっちはわざわざ架空の人物のドキュメンタリー映画という凝った体裁にしていますけど。この映画も結構キテレツなので別の機会に詳しく紹介しましょう。
さて「特別版」のDVDには、特典でCGのメイキングも収録されているのですが、オープニングの地球から太陽系、銀河系、外宇宙への見事な移動シーンは6ヶ月もの期間をかけて作られたそうです。このブログではわりと最近の映画を貶すことが多いのですが、とにかくCGの使い方が安易すぎるのです。特にダメダメなのがジェリー・ブラッカイマーが製作にからんだ作品とマイケル・ベイ監督の作品(声を大にして)。だから科学的考証の片鱗もない『アルマゲドン』なんかは虚仮脅しだけで意味のないCGを濫用していて最悪です。たぶん最新作の『トランスフォーマー』でも同じようなことをしてるんでしょうね。

この映画はカテゴリーとしては「SF映画」ではあるのですが、主人公であるエリーが仕事で上司と対立したり挫折したり、突然恋に落ちたり、恋人とすれ違ったり、最後に愛を確認したりと人間的に成長して行く姿を描いたドラマ作品だとも言えます。SFが苦手という人はそういうドラマ作品として楽しんでもいいかと思いますよ。ジョディ・フォスターはもちろん巧いんですが、変人の大富豪ハデンがソ連のミールからわざわざエリーにオンラインで通信してきてドアップで「乗ってみるかい?」と誘うシーンとか、パイロットに選ばれたドラムリンが会いにきたエリーに言い訳半分で人生訓を垂れるシーンとか、調査委員になったマイケルが公聴会で「オッカムのカミソリ」を引用してエリーを問い詰めるシーンとか脇役のおっさん連中のキャラの立ち具合が絶妙で、純粋で情熱家だけど協調性にかけているキャラであるエリーとの対比でストーリーを盛り上げてくれてます。コメディ映画ではないですが、アリゾナの電波基地に集まった野次馬連中のお祭り騒ぎの様子なんかは思わずニヤリとさせられます(カスタムカーのオーナーの集まりが出てきますが、これはファセル・ヴェガという車で、電波がヴェガ星から来たということで、単なる語呂合わせで集まったというこの監督らしいユーモア)。

ちなみにこの映画で一躍有名になったSETI(セティ)プロジェクト(=Search for Extra-Terrestrial Intelligence)ですが、現在は映画の冒頭に登場するプエルトリコアレシボ天文台によって収集された電波を解析し、人為的に発信されたと思われる信号を検出するために、BOINCという分散コンピューティングのためのソフトウェアを配布してこれをプラットフォームとしたSETI@home(セティアットホーム)プロジェクトを行っています。興味がある方はこちら 

究極映像研究所さんのレビュー
「細部に神が宿る」とは言い得て妙。画面ではほとんどわかりませんがエリーを乗せたハリアー戦闘機が管制船に着陸するシーンでは着陸甲板にちゃんと誘導員がいるのです。このこだわりがすばらしい!

『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』 

1975年 イギリス 監督:テリー・ギリアムテリー・ジョーンズ

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル [DVD]

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル [DVD]

以前にテリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』を紹介しましたが、この人はモンティパイソンの時代にも映画を撮っていました。ジャンル的にはパロディ時代劇かな。元ネタはイギリス人なら誰でも知ってるアーサー王の聖杯伝説、のはずだけど、元のストーリーに関係ない人物がいっぱい出てくるわ、舞台が現代に飛ぶわ、とにかく低予算なんで苦労して撮ってますっていう自主制作映画っぽい雰囲気に満ち溢れてます。モンティパイソンのギャグは好き嫌いが分かれると思いますが、だまされたと思って是非!

あらすじ

で、いつもはあらすじを紹介するんだけど今回はなしです。アーサー王と円卓の騎士に扮したメンバーそれぞれが、聖杯探しの途中で遭遇する冒険談をスケッチ(いわゆるショートコントをモンティパイソンではこう呼ぶ)にしているというだけ。それぞれのスケッチの内容を文章で紹介しても面白さが伝わらないので変な映画やバカ映画が好きな人はとにかく見てみましょうと言うしかないですね(単に文章力がないだけとも)。

モンティパイソンのメンバー全員が出演する映画は3作あって、これはその1作目。2作目はキリストをネタにした『ライフ・オブ・ブライアン』、3作目は人間の一生の意味を探求するという『人生狂騒曲(原題:Meaning of Life=人生の意味)』。2作目と3作目は予算も増えてかなり豪華なセットのシーンが多いです。特に3作目では老若男女の登場人物全員が「全てのスペル○は神聖なり〜」と精子の歌を歌いながら踊り出す(!)というミュージカル「オリバー」風のシーンがあって結構有名(このシーンを見るとなぜか大林宣彦監督の『ねらわれた学園』がフラッシュバックします)。他のサイトでも良く紹介されてますね。というわけで、ヒネクレ者の自分としては、あまりに低予算でセットが組めないためスコットランドに残っていた古城を借りてロケしたり、ロンドン郊外のただの野っ原か公園にしか見えないところで撮影してたり、馬をレンタルする予算がないので、騎士なのに徒歩で移動したり(従者によるカッポカッポいうひずめの効果音入り)という本作に、「仮面ライダー」や「人造人間キカイダー」の頃の東映のショボイ特撮作品に通じるサムシングを感じたのであえて1作目を紹介します。

そういえば、この映画には、なぜか三つ頭の騎士って怪人(?)が出て来るんだけど、これなんて『イナズマン』のイツツバンバラみたいです(三つ頭騎士は実際に3人が1つの着ぐるみに入ってるから一人でやってるイツツバンバラと少し違いますが。あー、イツツバンバラってのは顔が縦に5つ並んで付いてる怪人です。)。この騎士の腕や足がスパスパ切り落とされて血がピューピュー(本当にピューピューという感じで)出るギミックとか、凶暴な殺人ウサギに襲われて血塗れになるシーンなんかも、役者さんがマジで演技してるだけにバカっぽさ倍増で素敵ですね。

最初に書いたようにストーリーはあってないようなモンですが、ある城に聖杯が保管されているという情報が入り、アーサー王一行が聖杯の引き渡しを求めると、城にいるフランス人の城兵から徹底的に馬鹿にされます(城兵がしゃべるのはフランス語なまりの英語)。そこで城に攻め込もうとすると突然邪魔が入って終わり。本当に終わり。たぶん初めてこの映画を見た人は間違いなく「何じゃこりゃあ、ふざけんな!」と突っ込むこと必至のラスト。いや、いっそ潔いですけどね、ここまでやってくれると。逆に言えば、いわゆるエンターテインメントとしての劇映画の約束事に囚われていない希有な作品だと言えるかもしれません。

「シネマギロテスク」さん(?)の映画評もなかなか的確ですね。つーか、やっぱ誰が見ても自主制作映画っぽいんだな、コレ。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/guillo/cnmgltsq/holygrail.htm

『マッドマックス2』 

1981年 オーストラリア 監督:ジョージ・ミラー

マッドマックス 2 [DVD]

マッドマックス 2 [DVD]

何作か邦画が続いたので海外物から。1960年代生まれの野郎には懐かしい映画。昔の映画には男気が溢れていましたよ、もうバトルアクション全開。日本で言えば『トラック野郎』シリーズ、洋モノだったらやっぱり『マッドマックス』3部作だ。非道な奴に戦いを挑むなら真っ向勝負、ドーンと行け。何とかノートにチマチマ相手の名前書いてるなんて軟弱だぞ。喝!

あらすじ

凶悪暴走族との戦いで妻子も警官の職も失ったマックスは失意から立ち直れないまま、愛車V8 インターセプターと愛犬ザドッグと砂漠を当てもなく走る日々を過ごしていた。そんな中、突然核戦争が勃発し都市文明は崩壊。ガソリンが供給されなくなった砂漠地帯は食料とガソリンを求めて殺戮を行う暴走族集団が出没する無法地帯と化した。今日もマックスは襲ってきた暴走族を返り討ちにしタンクから漏れるわずかなガソリンを回収するのだった。
そんなある日、マックスは道端で発見したオートジャイロからガソリンを回収しようと近づくが、それはオートジャイロの主であるジャイロ・キャプテン(ブルース・スペンス)の仕掛けた罠だった。マックスに罠を見破られ、捕まったジャイロ・キャプテンは石油の精製施設の場所を教えると持ちかける。二人が精製施設の近くまでやってくると施設から脱出しようとした車がヒューマンガス(クジェル・ニルソン)に率いられる暴走族集団に襲撃されていた。ヒューマンガスは要塞化して抵抗を続ける施設に投降を呼びかけるが、施設では抵抗を続けようとするリーダーのパッパガーロ(マイケル・プレストン)と投降しようとするメンバーとが対立を始めていた。そんな時、マックスは襲撃で生き残ったメンバーの一人を施設に運び込むが...。

『マッドマックス』3部作を語る際にどうしても出る話が、一作目『マッドマックス』公開当時に話題になった撮影時のアクションでスタントマンが死んだという噂(というか宣伝で言っていたと思います。たしか)。『マッドマックス2』のDVDの映像特典ではメインとサブのスタントマン2名がアクションの事故で病院送りになる映像が収録されています。(調べたら一作目での死亡説については出演者の一人が「ミスターバイク」誌のインタビューで否定したという情報もありました)まあ、それくらいカーアクションには力が入っている、というよりも『マッドマックス2』からカーアクション取ったら何も残らんくらい。それまでに作られたすべてのカーアクション映画(『栄光のルマン』は半分以上ドキュメンタリーなので除く)の頂点に立つ作品がまさに本作といってもいいでしょう。今から20年以上前に作られた映画ですが、カットをつなぐ編集テクニックも含めてアクションシーンの凄まじさは鳥肌モノで人死が出たと思ってもおかしくありません。
もう一つ、これも良く言われる少年ジャンプで1983年に連載がはじまるとあっという間に一世を風靡した人気コミック『北斗の拳』との類似です。主人公の設定や対立する暴走集団のパンクっぽいビジュアル、核戦争後の荒廃した世界という世界観は『マッドマックス2』から完全に影響を受けたと言わざるを得ませんが、マッドマックスファンの中でも評価が分かれる1985年公開の3作目『マッドマックス サンダードーム』では一対一の格闘戦がメインでマックスは子供好きな性格になっており、これは逆に「北斗の拳」をパクリ返したのではという説もある訳です。
ここまで読んで『マッドマックス』3部作は全部カーアクション映画と思われた方もあるかもしれませんが、一作目は警官を主人公にした犯罪サスペンス映画の傾向が強く、2作目は近未来SFヴァイオレンスアクションになり、3作目はファミリー向けSFアドベンチャー(シュワルツネッガーの『コナン・ザ・グレート』の近未来版みたいな感じ)とそれぞれに作風は異なるのです。こいつは、私見ですがはじめの2作の大ヒットで3作目はハリウッド製作になったために、当時ハリウッドで受けていたアドベンチャーものの要素を無理矢理入れたような気がします(ちなみにインディジョーンズ3部作の一作目『レイダース/失われたアーク』の公開は1981年で2作目の『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の公開が1983年)。自分としては1作目も3作目も映画としての出来は決して悪いとは思いませんし、家族で見るには1作目、2作目は内容的に過激すぎるでしょう(特に2作目のヴァイオレンス描写は現在ではノーカットでは地上波放送は無理っぽいレベル)。しかし、主人公のキャラが一番立っているのは2作目です。完全に人間不信に陥り孤独な戦いを続けていた主人公が、一度は仲間として受け入れられるものの、それを拒否してしまう。そして戦いで傷き、自らが拒否した仲間に助けられ、ついに自分の復讐のためではなく仲間のために戦うことを決意する主人公、まさに「漢」と書いて「オトコ」ってやつですね。
ちなみに、最近はしゃべる豚ちゃん映画『ベイブ』とか、踊るペンギンちゃん映画『ハッピーフィート』といったすっかりファミリー向け映画しか撮らないジョージ・ミラー監督ですが、『ロッキー4』に刺激されたのか『マッドマックス4』の製作準備にかかっているらしい。一応マックス役はメル・ギブソンを想定してるらしいけど初老のマックスとか見たくねえけどなあ。

『マッドマックス』3部作については mandamTさんの「ブロンソン原理主義」(武論尊ではない)に詳しく紹介されております。やっぱ男気映画ですから。
http://charles-bronson.hp.infoseek.co.jp/Madmax2.htm

『殺人狂時代』 

1966年 日本 監督:岡本喜八

殺人狂時代 [DVD]

殺人狂時代 [DVD]

もう一発岡本作品を。いやーメチャクチャ面白いです。変な殺し屋が次々登場したり、二重三重のドンデン返しがあるストーリーとか、ちょっとスパイ物みたいなテイストがあったりとか、マッドサイティストも出てくるしで、第一シリーズの『ルパンIII世』っぽい。他の岡本作品と違ってあんまりシンミリさせずに最後までハードボイルド・テイストなのもクール! 変な殺し屋たちは岡本喜八版の『快傑ズバット』か。

あらすじ

水虫でド近眼でマザコンのさえない心理学者、桔梗信治(仲代達矢)がある晩アパートに帰ってくると、見知らぬ丸顔の男(加東大介)が待っていた。男は「大日本人口調節審議会」の会員で、世界を優秀な人間だけで構成するために世の中の役に立たない人間を抹殺しているという。桔梗はパラノイアだと決めつけるが男は意に介さず、剃刀を仕込んだカードで桔梗を殺そうとした。間一髪の偶然で男を倒した桔梗が警官を呼んでくると、なぜか男の死体はなくなっていた。
警察で犯罪記事の取材をしていた新聞記者の鶴巻啓子(団礼子)と桔梗は審議会が腕利きの殺し屋たちを雇っていると推理し、殺し屋に偽の依頼をして情報をつかもうとするが、殺し屋を紹介するというヤクザと喧嘩になり、さえないはずの桔梗があっと言う間にヤクザを叩きのめしてしまう。桔梗の腕前に惚れ込んだチンピラの大友ビル(砂塚秀夫)、桔梗、啓子の3人が審議会の謎を追っていくと次々に新手の殺し屋が現れる。
一方、審議会の黒幕、溝呂木(天本英世)は、協力を申し出ていた元ナチスゲシュタポ隊長を拷問にかけていた。彼は協力の条件に審議会の殺し屋をテストするため桔梗を指名したのだが殺し屋が次々返り討ちに遭うので、溝呂木は桔梗には何か秘密があると気がついたのだ。元ゲシュタポが桔梗を狙う秘密とは...。

ボサボサの頭、牛乳瓶の底みたいな黒縁眼鏡、もっさりしたしゃべり方、極めつけに「あ〜カユイ」と足の指の間を掻くのが演技とはいえかなりキモイ仲代さん。前半はこの徹底的にイケてない仲代さんを見てるだけでも楽しめます。後半では次第に桔梗の正体が明かされていくにつれいつものハードボイルド風の渋いキャラになりますが、わざとトボケた雰囲気なのがルパン風。乗ってる車がオンボロなシトロエン2CV(ドゥーシヴォー)ってのもイイ感じです(ちょとしたカーアクションもあって『カリ城』っぽい)。最初に対決する加東さんと仲代さんは、『用心棒』で猪之吉と巳之助兄弟もやってました。
ヒトラー信者のマッドサイエンティスト溝呂木博士を演じる天本さんは、しゃべり方からしてほとんど『仮面ライダー』の悪の秘密結社ショッカーの幹部「死神博士」そのまんまのキャラです。というか『仮面ライダー』の放送が5年後くらいなので、このキャラをライダーでもそのまんまやってたのかも。天本さんはスペイン語が堪能だそうですが、この作品では流暢なドイツ語を披露されています。ちなみにショッカーもナチスの残党という設定らしく、21世紀の現在ではナチスの残党とかいっても現実味がないですが、1960年代当時は南米にいる元ナチスの大物をイスラエルの情報機関モサドが追っかけてたりしてたんで、ネタとしてはそう現実離れしてるわけでもなかったのでしょう。
砂塚さんは『ああ爆弾』とほとんど同じキャラで眼鏡かけてるかかけてないかの違いくらい。
音楽が佐藤勝さんで『用心棒』と同じ。こっちの劇伴はジャジーで格好イイです。
原作はミステリー作家の都筑道夫氏の『飢えた遺産』(現在は『なめくじに聞いて見ろ』)。原作とは審議会や桔梗の秘密の設定がちょっと変わっているらしいので、原作を読んでいても楽しめるんじゃないでしょうか。
後半に出てくる自衛隊の演習シーンの中で飛んできた砲弾が不発で、桔梗がビルに『この弾の税金はおまえが払った分だろう』ってのが岡本監督らしい台詞で印象的でした。

公開当時は短期間で上映が打ち切られてしまったらしくカルト作品扱いされている本作ですが、テンポのいいアクション、控えめなお色気シーン、劇伴やファッションや小道具の格好良さ、ちょと現実離れしたひねったストーリーなど、最近数だけはたくさん作られるようになったテレビドラマみたいな邦画が失ってしまったテイストが満載で、今だからこそ多くの人に見てもらいたい作品。殺し屋つながりで市川昆監督の『ど根性物語 銭の踊り』、鈴木清順監督の『殺しの烙印』なんかと比べてみるのもそれぞれの監督の個性が見れて面白いかと。

『ああ爆弾』

1964年 日本 監督:岡本喜八

ああ爆弾 [DVD]

ああ爆弾 [DVD]

岡本監督の作品には戦争や国家を風刺したものも多いので、タイトルからは結構シリアスな内容を想像していたけど観てビックリ。服役中に組を乗っ取られた昔気質のヤクザの親分が、おっちょこちょいの爆弾作りと組んで復讐しようとするが...。狂言浪花節、お題目、ジャズにマンボに唱歌の替え歌まで全編が音楽とリズムに溢れたトンデモなスラップスティック・コメディの傑作。顔が異常に長い伊藤雄之助風車の弥七中谷一郎(黒縁眼鏡がヘン)、若大将シリーズ有島一郎、岡本作品ではおなじみの天本英世といった個性派俳優たちの怪演も見どころ。

あらすじ

 刑務所で服役中の昔気質(かたぎ)の親分大名(おおな)大作(演:伊藤雄之助 役名は狂言の大名ーだいみょうーから)は、いつも「出所した時には、こう子分どもがずらっと並んで」と、派出所に花火を投げて捕まった爆弾狂の田ノ上太郎(演:砂塚秀夫 役名は狂言の太郎冠者ーたろうかじゃーから)に自慢していたが、刑期を終えて二人が出所すると出迎えに来たのは息子の健作(演:高橋正)一人だけ。聞けば大名の服役中に組は会社組織になったという。家に戻る前に愛人ミナコのアパートに寄った大名だが、そこには見知らぬ男(演:中谷一郎)と女がベッドの中に。慌てて組の事務所に行ってみると平和興業という会社で社長は別にいるという。その社長とはさっき愛人のアパートにいた男、矢東弥三郎だった。子分だった竜見(演:二瓶正也)に自分は何だと詰め寄ると「社長より上の会長です」と言われ気を良くして家に戻った大名だが、表札は矢東の名前になっている。真っ暗な家の中に飛び込むと愛人のミナコを子分のテツ(演:天本英世)が刺したところだった。テツからミナコが大名を裏切って矢東の女になり、矢東に組も乗っ取ったことを知らされた大名は単身、平和興業に殴り込みをかけるが高血圧で心臓の発作を起こし、元の子分たちから道端に放り出されてしまう。
 見舞いに来た太郎が小型爆弾作りの名人だと知った大名は、選挙に立候補した矢東が”ペンこそわが命”というキャッチフレーズで、いつも万年筆を持ち歩いているのに目を付け、爆弾を仕込んだ万年筆で矢東を爆殺しようとするのだが...。

 ここまでが前半で、中盤に矢東の運転手役でシイタケこと椎野武三を演じる、沢村いき雄さんが出てきてから展開がどんどんスピーディーで面白くなります。大作とシイタケは幼なじみという設定ですが、長身で面長な伊藤さんと小さくて丸顔の沢村さんが対照的で面白い組み合わせ。スターウォーズC3POR2D2のロボットコンビは『隠し砦の三悪人』の百姓コンビ、藤原釜足さんと千秋実さんがモデルと良く言われますが、伊藤、沢村コンビの方がぴったりな感じです。でも伊藤さんはC3POというよりはベイダー卿って感じですが。ちなみに沢村さんは『天国と地獄』の江ノ電の車掌役や『用心棒』の気の弱い岡っ引き役など黒沢映画で良く見るほか、本多猪太郎監督のゴジラシリーズでも時々見かける俳優さんですが、気の弱い小市民的な役をやらせたら右に出る人がないですね。キングオブ小市民。
 ストーリーは万年筆型爆弾をめぐってのドタバタになっていきますが、途中この沢村さんが会社の金を横領しようとして、銀行のシーンになります。すると突然男女の行員たちが残業の歌を合唱し始めます(どんな銀行だ)。そしてまったく本筋と関係なく支店長役の有島一郎さんと秘書役でウルトラマンのフジ隊員=桜井浩子さんが登場して掛け合いで残業の歌を歌いはじめます。この二人の出番はこのシーンだけですが、突然、イデ隊員(二瓶さん)だけでなくフジ隊員まで出てくるので驚きました。さすがにキャップやハヤタ隊員なんかは出てきませんが。当時流行していたらしいヘップバーン・スタイルのファッションでキメて、残業で恋人に会いに行けないせつなさを歌うOLの桜井さんはなかなかキュート。一方の有島さんのちょっとトボケた歌い方も味わいがあります。
 意味なく楽しいシーンをはさんで、いよいよ沢村さんが金を引き出したところに突然銀行強盗が入り、自分が持ち逃げするはずの金を横取りされまいと決死の覚悟で強盗と格闘する沢村さん。これだけでも笑ってしまいますが、このシーン爆笑もののオチがあり、さらにそれが伏線にもなっています。
 爆弾とか死体とかがいろいろなところをめぐりめぐって、というのはコメディでは良くあるネタ(『クレイジー・メキシコ大作戦』冒頭の銀座のママの死体とか。最近のでは、三谷幸喜監督『THE有頂天ホテル』の幸福のマスコットとかも)ですが、「ペン=平和の象徴」を掲げているのが、実は戦後のドサクサで台頭してきた新興暴力団のボスという戦後の世相を取り入れた風刺の効いた設定と、全編にちりばめられた音楽がいかにも岡本作品らしく異彩を放っています。

『鴛鴦歌合戦』

1939年 日本 監督:マキノ正博(のち雅博)

本年もよろしくお願いします。一応お正月ということで、今回はおめでたい奇妙奇天烈映画をご紹介。映画が無声映画(サイレンと)から音声付きのトーキーになった頃、盛んに「オペレッタ映画」なるものが作られました。音声が入れられるようになったので、映画をオペラ仕立てにしようというものです。もちろん本当のオペラは上演時間が長くて映画の尺には収まらないし、一般大衆にはオペラなんて高級すぎて退屈ですから、あくまで「オペラ風」ってことで、バックに踊りを入れたり、登場人物が掛け合いで台詞を歌ったりみたいな感じの映画。1950年代以降は「ミュージカル映画」と呼ばれるようになります。これは『浪人街』の名匠、マキノ正博監督の傑作オペレッタ時代劇映画です。

鴛鴦歌合戦 [DVD]

鴛鴦歌合戦 [DVD]

あらすじ

貧乏長屋に住む浪人、志村狂斎(志村喬)は大の骨董マニア。一人娘のお春(市川春代)が日傘作りで稼いだなけなしの金を怪しげな骨董につぎ込んでしまい、二人は米も買えず毎日麦焦がしを食べている。そんなお春が密かに憧れているのが隣りに住む浪人浅井礼三郎(片岡千恵蔵)。もっともこの浅井、仕官の話や縁談があっても断ってきままな生活を送っているフリーターみたいなやつ。長屋の向かいの大商店香川屋のわがまま娘お富(服部富子)も浅井に夢中。
一方骨董好きの大名、峯澤丹波守(ディック・ミネ)はお忍びで骨董を買いに来たところお春に一目惚れ。お春の父狂斎が骨董マニアなのを知った家来の遠山満右衛門(遠山満)はお春を手に入れるため骨董屋とある企みを...。

結構以前にインド映画の『ムトゥ 踊るマハラジャ』を公開時に観た後もしばらく口がきけないくらいの衝撃を受けましたが、まさかこんな古い時代劇で同じような衝撃を受けるとは思いませんでした。何が衝撃だったかと言うと登場人物が歌って踊る、そんなことではないです(最近の邦画やハリウッド映画しか観ていない若い人たちにはこれだけでも衝撃かもしれませんが)。
あの七人の侍で勘兵衛を、あのゴジラで山根博士を演じ、重厚な演技で知られる名優志村喬さんが歌うんです!しかもすっごく間抜けな歌をものすごく楽しそうに歌うんです!あの渋い声で「ホ〜レ、ホレホレ、この茶碗〜、チャンチャン茶碗と音がする〜」と茶碗を持って歌う志村さんを一体誰が想像できるでしょうか。でもこの映画の中にはそんな志村さんがいるのです。志村さんの凄いところはこういう三枚目な役をすごく楽しそうに演じながら、一人娘の行く末を案じる父親の心情もしっかり演じているところ。片岡千恵蔵さんが主役という扱いになってはいますが、はっきり言って志村さんが実質的な主役でこの映画を最後まで全速力で引っ張っています。

そしてイキナリですが市川春代さんに萌えです。萌えまくりです。もう劇中の市川さんのツンデレぶりは凄いです。これは是非本編で観ていただきたい。健気(けなげ)、純情、しおらしい、いじらしい、せつない。そんな彼女を適当にあしらう片岡千恵蔵がだんだん憎らしくなってくる。それくらい男心が揺さぶられます男なら。「萌え」なんて所詮アニメヲタクの戯言と鼻で笑っているそこの貴兄。低レベルな視聴者に迎合していかにも「萌えキャラでござい」という設定の二次元女子にうつつを抜かしているそこの貴兄。この映画を観られよ、しかして真の萌えに目覚められよ。(って正月からこのテンションの高さは何?)
それから例によってどうでも良い情報ですが、大正2年生まれの市川さんは『ウルトラセブン』24話『北へ還れ』でフルハシ隊員の母親役を演じておられたとのこと。北の方(北海道?)で牧場をやっているお母さんがフルハシ隊員にウルトラ警備隊を辞めて牧場を継いで欲しくて危篤だとウソついて故郷に呼び戻すっていうホームドラマみたいな話ですね。このお母さんを観ても別に萌えないと思います。

映画に詳しい方はご存知かと思いますが、監督のマキノ正博さんは牧野省三監督の息子で、父親が多額の負債(昭和のはじめ頃で37万円とか)を残して死亡したために、返済のためとにかくたくさんの映画を撮りまくった人で「早撮り」で有名な監督さんでした。そのせいかどうかこの作品も資料には7日間で撮ったとありますが、いい加減な仕事をしているとか、やっつけで撮ったといったような印象はまったくありません。スペイン人でジェス・フランコというB級映画をやたらに多作するやはり早撮りで有名な監督がいますが、この人の作品はかなりヒドイですけどね。
むしろ戦前の映画とは思えないほどスピーディーで、楽しさやうれしさや明るさにあふれ、生きて行く希望がわいてくるようなすごい映画です。

『パプリカ』

2006年 日本 監督:今敏

2ヶ月ぶりの更新。更新されているかどうか気になって定期的に来てしまっている方(いるかどうかしらないが)に申し訳ないので、タイトルの後ろに(不定期更新ブログ)と追加しました。
筒井康隆先生が現在よりも少しだけSFっぽいのを書いていた頃の作品『パプリカ』がアニメ化されました。製作はマッドハウス今敏監督。どんなんかなーと思って観に行ったんですが、これって一言で言うと「大人向けの千と千尋の神隠し」?

あらすじ

精神科医の千葉敦子(声:林原めぐみ)は患者の夢を共時体験できる装置DCミニを同僚の時田(声:古谷徹)と共同開発し、患者の夢の中では美少女夢探偵コードネーム「パプリカ」として夢分析を行っていた。しかし未完成のDCミニが盗まれ、犯人によって夢に侵入された人々が次々に異常を来す事件が発生。DCミニの開発に否定的だった研究所の理事長(声:江守徹)は開発の停止を決定する。あくまでも真犯人を突き止めようとする敦子と時田だったが、責任感から一人で夢にアクセスした時田は犯人の悪夢に呑み込まれてしまう。時田を救うためパプリカとして夢にアクセスした敦子だったが、そこには意外な真相が...。

正直言ってどっかで見たような話です(苦笑。いや原作が書かれた時点ではこの設定やストーリーは十分に斬新だったんですが、『マトリックス』とか『イノセンス』とかここ10年くらいで虚構が現実に侵入したりとか、現実だと思っていたのがコンピューターのでっち上げた虚構だったとかのメタフィクション系の作品がやたら多くなったので、どうしてもそういう印象になってしまいますね。ただ面白いのは割とそういう作品は舞台が近未来で無国籍な場所になっていることが多いんですが、今監督の趣味なのか『パプリカ』は2000年代の東京に設定されていて、それは現実世界の「リアル感」を出したい配慮だったのかと。ただ何と言うかちょっとアナログでかつアナクロな感じ(粉川警部の夢のシーン等)もあるのですが、それは原作が筒井さんで、脚本が原作に忠実だからでしょう。今監督も何かのインタビューで原作の筒井テイストは残すようにしたと言っていたようです。

最初に「大人向けの千と千尋の神隠し」と書いてしまいましたが、実は作画監督(キャラクター設定も)が同じ安藤雅司さんでした。さらに他の作品との類似点みたいなのも結構あります。外注先にはGAINAXの名前もあったんですが、パプリカが孫悟空になって夢の世界にダイブしていくシーンの製作は多分ガイナかな?(DAICON FILMのパロディ)。終盤なぜか巨大化戦になってしまうのですが、ここだけ見るとすごく「エヴァ」っぽいです。もちろん巨大ロボ(ヘナチョコ)も出てきます。敦子や時田がファミレスで食事するシーン、時田の食いっぷりはまさに『ルパン3世カリオストロの城』のルパン。
夢が現実に侵入して来るシーンで逃げる敦子たちの足下に小さな大名行列が(筒井さんの短編『表の行列なんじゃいな』)、あとピンクの象と白いワニもいたような(ピンクの象は欧米ではアル中の幻覚として有名、白いワニは江口寿史の『すすめパイレーツ』にシャブ中&ネタ切れで睡眠不足の漫画家の幻覚として登場)
夢の中でパプリカが捕われてしまうシーン、相手役の声は山寺宏一さん。林原めぐみ山寺宏一って言えば『カウボーイ・ビバップ』のフェイ&スパイクですね。多分お二人も当時のことなどちょっと思い出しつつ演じられたんじゃないかと。

まあ、こういう小ネタは知ってても知らなくても楽しめる作品ですが。

あんまりジブリ作品をアレするとファンの人から文句が来そうですが、『もののけ姫』以降、声優の経験がない有名人をメインキャラクターのアフレコに起用してしまうことで、トータルの作品クォリティが低下してしまっているのはもう疑いようがないと感じます。なかには美輪明宏さんのように本職の声優としてもやっていけそうなくらいうまい人もいますが、それはおそらく美輪さんが舞台をやっていることと無縁ではないでしょう。本作での江守さんも元々は舞台俳優で、舞台をやっている俳優さんたち(声優さんも舞台に立っている人が多い)は発声の基本がしっかりしていて、声に感情を乗せること、言い換えると声の微妙なトーンやしゃべり方できちんと感情表現できるテクニックを持っているのです。これはドラマや映画をメインに活動している俳優さんとは大きく違うところでしょう。ジブリ作品は彩色前の動画で先にアフレコした音声に最終的な動画で口の動きをトレースさせるといった、これまで日本のアニメでは非常識であった技術を使ってまで、声優の弱点を悪く言えばごまかしていたんだってことが、この作品を観るとわかってしまいます。それくらい『パプリカ』の声優さんはハイレベルで、やっぱりアニメーションは声優さん次第だなーと改めて感じました。特に主役の敦子=パプリカ役の林原さんの演技(声優さんの場合は何と?)は最高です。「エヴァ」の綾波役でブレイクした林原さんは、どちらかというとあまり感情を表に出さない役(『名探偵コナン』の灰原とか)が多かったですが、『パプリカ』では前者タイプの美貌のエリート精神科医敦子と、まったく正反対の自由奔放なパプリカという2面性のあるキャラクターを実に巧く演じ分けていて(こんなに生き生きした声の林原さんは正直はじめて)、今後この作品が彼女の代表作になるのは間違いないと思いますし、これからの活動にも期待大です。

最後に音楽について。テーマ曲は元P-MODEL(といっても知らない人が多いと思いますが、80年代にはYMOと同じくらい有名なテクノバンドでかなり前衛的な楽曲をやっていた)の平沢進さんです。この人の音楽もテクノでデジタルなんですが、なんとなくアナログっぽいところがあって作品全体の雰囲気には合っている感じでした。ここのところどんな活動しているのか良く知りませんでしたが、今監督の『千年女優』や『妄想代理人』なんかの音楽も平沢さんが担当していたと知り、意外なところで活躍されていたので少し驚いた次第。